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建築設計事務所の仕事とは何か、設計の仕事とは何かとよく聞かれることがあります。そんな時私は必ず『建主の利益を守る』事だと答えます。このことは設計事務所の行う設計とはという意味です。
では、なぜ設計事務所に限るのかと言いますと、設計事務所の存在価値とも大きく関わりますが、たとえば住宅を建てる場合、わざわざ設計事務所に頼まなくても住宅メーカーに頼めばすべてやってくれるし、設計料も取られることはありません。(設計料、工事費については別のところで詳細に述べたいと思います。)これは設計と施工をすべて一つの会社で行っているからです。設計事務所の仕事の中にはただ単に設計図を描くだけでなく、現場監理という仕事も含まれます。
現場監理とは建物の施工が設計図通りに行われているかどうか直接現場に行って建物を見たりしながら確認していく作業です。この確認作業をする人が同じ会社の社員であるならばどういうことになるでしょうか。明らかに間違っている、あるいは専門知識のない建主にもわかってしまうような所は修正するでしょうが、専門家でなくてはわからないような所、壁、天井裏、床下などに隠れてしまうようなところは間違って施工したとしても、会社の利益を考えれば当然黙殺されてしまいます。最近よく新聞、テレビで取り上げられる手抜き工事というのは、このような現場監理と施工する人が同じ会社であるということからも起こることと言えます。すべてがそうだとは申しませんが、会社の利益が最優先されるという会社精神を考えれば、当然起こり得ることだとも言えます。
設計事務所が現場監理を行う場合は施工している会社とは全く利害関係がないので建主の立場に成り変わって現場の状況を客観的に見ることができるのです。“建主の立場となって”ということはまさしく“建主の利益を守る”ということの他ありません。
私は設計の仕事で最も重要なのはこのことだという信念のもとに日々活動しています。
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